桃林の風景 撮影:野中健司さん
今年の初夏に公方公園を訪れた際、花桃の木の根本にネットが巻かれているのを目にしました。
職員の方に「これは?」と質問したところ驚きの回答を頂きました。
「“クビアカツヤカミキリ”という昆虫をご存知ですか?これはその虫から守るために保護しているんです。」
なんと、この3年間で、クビアカツヤカミキリによる食害で、公方公園の花桃の木は100本も姿を消しているんだそうです。
それでも、この待ったなしの状況の中、職員の方々の奮闘が功を奏し始めています。
「この昆虫や痕跡を見つけたらすぐに教えて欲しい」という言葉に
(私たち公園を訪れる一般市民も、桃の木を守る力になれるのでは?)
と思い、koga.noteで記事にしようと思い立ち取材してみました。
群馬県HPから引用
https://www.pref.gunma.jp/04/e23g_00005.html
クビアカツヤカミキリに狙われている桃林!
クビアカツヤカミキリは体が黒く首の部分だけが赤く、色彩的にはちょっとお洒落な色配分の昆虫ですが、公方公園の中では花桃の木を食い荒らす悪いやつだそうです。
特定外来生物に指定されているこの昆虫、茨城県内では古河市で最初に被害が確認されました。
桜の木でも被害が出ていますが、桜よりも桃の木を好む傾向であることが最近になって判ってきています。
被害にあった木の根元付近の地面を注意してみると、クビアカツヤカミキリにより食害された”フラス”(木屑と糞が混ざったもの)がたくさん落ちていることがわかります。
古河市が誇る「桃まつり」鮮やかな美しさで楽しませてくれる桃林を守るためには?
梅の開花と桜の開花の間の時期、公方公園では、1500本を超える花桃の木に濃いピンクの花が一斉に咲きます。
その満開の景色は、さながら桃源郷の美しさ。
日本一の桃林とも言われていて、これが古河市が誇る「古河桃まつり」です。
お祭りは毎年3月中旬から4月初旬の3週間の間に開催されます。
公方公園ではこの「古河桃まつり」のために、これまでも一年を通して、花桃の手入れには特に力を注いできました。
クビアカツヤカミキリの被害について説明してくれた公園職員の伊藤さん
現在、管理棟の職員の巡回により、クビアカツヤカミキリの痕跡である“フラス”を発見次第、速やかに『処理』する活動が連日続けられています。
具体的には、幹や枝に付着したフラスを目印に、幼虫が食害した穴に沿って樹皮をめくり幼虫を殺します。
幼虫は越冬やサナギになる為に木の中心部へ向かって掘り進むので、奥まで続く穴を発見した場合にはそこに殺虫剤を噴霧します。
そのほか、幹に穴を開けて注入する薬剤などもありますが、公方公園では、これまでの経験を基に、効果や必要性など考慮しながら対応しているそうです。
また、大人になったクビアカツヤカミキリは羽があり、あちこち飛んで行くので飛散対策として、必要に応じてネット掛けを実施しています。
なるべく桃林の景色を壊さないように、一般的な青いネットではなく、特別な茶色いネットを使っているそうです。
「これ以上被害を拡大させない、なんとかしてここで食い止めたい」と話されていた言葉が印象的でした。
桃林の風景 撮影:野中健司さん
公方公園の桃林には物語があります。
江戸時代の古河藩主:土井利勝が、極端に ”薪”が不足していた当時の領内を心配し、江戸市中の子供達に桃の実を拾わせるように命じました。
それを古河藩に送ったところから始まり、育った桃の木の枝は燃料の薪となり、古河藩は危機を乗り越えたと言われています。
電気、ガスが無かった江戸時代。薪は生活必需品で、米や塩に次ぐ重要なものの一つと言われています。
時代の移ろいとともに一旦は消えかけた桃林でしたが、昭和47年の公方公園再生の折、この地のシンボルであった御所沼とともに、眠っていたかつての桃林も蘇りました。
大切な桃林を地域のチカラでパトロール!
古河市の大地が歴史とともに抱き続けているこの物語。
春になると、その圧巻の美しさで、訪れる人々を魅了させてくれる公方公園の桃林です。
クビアカツヤカミキリの被害を未然に防ぐためにも、この記事を読んでくれたみなさんが、公方公園の花桃の木を守る一員になり、地域のみんなで大切に守っていけたらいいです。
公方公園を訪れた際には、意識して花桃の木の根元にも目を向けてみてください。
そして見つけた時は、公園管理棟にいる職員さんにぜひ教えてくださいね。
古河公方公園(古河総合公園)
〒306-0041
茨城県古河市鴻巣399−1
https://www.koga-kousya.or.jp/koga-park/
(取材:ゆきらこ)