こんにちは。
kogaライターの相馬はじめです。
みなさんは、古河市を拠点に活動するコント劇団『自己批判ショー』をご存知ですか?
自己批判ショーは、今年で結成30周年を迎える古河きっての老舗劇団。ナンセンスな笑いを武器に、茨城のパワースポットとして走り続ける彼らに迫るべく、取材しました。
話を聞いたのは、2代目リーダーの山本治(やまもと・おさむ)さん。取材中には、なんと私と古河四小・古河二中・総和高校の同窓生であることが判明し、一気に心の距離が縮まりました。
ステージ上の姿とは違う、実直で劇団愛にあふれる素顔。山本さんの言葉で語られた30年の軌跡から、古河への想いや本音をお伝えします。

自己批判ショー二代目リーダー
元々は劇団の一ファンだったが、初代代表の離脱に伴いリーダーに就任。「辞めなきゃ続く」をモットーに、今も走り続ける。
古河生まれナンセンス育ち。『自己批判ショー』とは?

──まずは『自己批判ショー』を初めて知る方に向けて、どんな劇団なのか教えていただけますか?
山本治さん(以下・山本):自己批判ショーは、1995年に古河で旗揚げされたコント劇団です。今年で結成30年を迎えます。メンバーは茨城各地や都内にもいますが、ずっと古河を拠点に活動しています。そんな私たちは自称『茨城のパワースポット』。見てくれた方すべてに、笑いと元気を届けることをモットーにしています。
──茨城のパワースポットはインパクトがありますね(笑)。コントのスタイルも教えてください。
山本:ルーツにあるのは、イギリスの『モンティ・パイソン』や、日本の『ザ・ドリフターズ』ですね。お笑いの構図には、権力者やリーダーが理不尽な目に遭うのが面白いというのがありまして。ドリフで言えば、リーダーのいかりや長介さんがひどい目に遭うとみんな笑いますよね?あれは一種の風刺でもあるんですけど、うちの劇団もそれと同じです。リーダーの僕がイジられたり、振り回されたりする様子をユーモアで包み込んで、誰もが笑えるナンセンスなコントへと昇華させています。

──個人的にはコント『ラジオ体操第一のつもり』や『踏み絵踏み絵レボリューション』がツボです(笑)。とはいえ、劇団を30年間も継続させるというのは、並大抵のことではありません。
山本:長く続ける秘訣みたいなことをよく聞かれるんですが、答えはシンプルで『辞めない』ことなんです。一般的な劇団は、自分たちで劇場を借りて公演を打たないと活動できませんが、私たちはオファーがあればどこへでも行きます。お祭りや音楽イベント、結婚式の余興まで。「呼んでくれたら交通費くらいで行きますよ」というフットワークの軽さがあったからこそ、オファーが途切れることもなかった。常に次の予定がある状態だったので、結果として辞めるタイミングがなかったのかもしれません(笑)。
「僕が一番のファンだから」消去法で選ばれた二代目リーダー

──その柔軟さが強みであり、皆さんがつい頼ってしまいたくなる劇団になっているんですね。また30年の歩みの中で、山本さんはリーダーになられてからどれくらい経つんですか?
山本:二代目リーダーに就任してからは、15年ほど経ちます。入団した背景には、元々自己批判ショーのファンだったことがあります。そして劇団が始まってから13、14年ぐらいのタイミングで、初代リーダーがふらりと行方不明になりまして(笑)。残されたメンバーで『これからどうする?』となった時、みんなの視線が僕に集まって……。自分で言うのもなんですが、『他にまとめ役がいなかったから消去法』だったんです。そうして気づけば、二代目を襲名していました。

──まさかの展開ですね(笑)。それでも引き受けられたのは、劇団を続けたいという想いからでしょうか。
山本:そうですね。誰よりも僕自身が自己批判ショーのファンだったので、大好きな劇団をなくしたくない気持ちは強かったですね。極端な話、劇団さえ残ってくれるなら、リーダーは僕じゃなくて、ほんとに誰でもよかった。思い返せば他にも解散の危機は何度もありましたが、いちファンとして『まだ見たい』という純粋な気持ちが、今も僕を突き動かしています。
ノルマも団費もなし。いつでも帰ってこれる場所であるために

──それほどの想いを持って劇団を引っ張られているんですね。ただ山本さんも含めて、共に活動するメンバーの皆さんは、本業を持つ社会人でもあります。仕事や家庭との両立は大変ではないのでしょうか?
山本:大変ですね(笑)。ほとんどのメンバーが家庭を持っているので、家族の協力……あるいは「良い意味での諦め」で成り立っているのが正直なところです。だからこそ、僕がリーダーになった時に決めたルールがあります。それは『団費は取らない』『チケットノルマもなし』ということ。自分の采配で赤字が出たら僕が被る覚悟で、メンバーの金銭的・心理的な負担は、極力減らせるように努めています。
──そこまで徹底して参加へのハードルを下げているのですね。
山本:そうしないと続きませんから(笑)。おかげで、家庭の事情で5年離れていたメンバーの川辺君や、15年ぶりに復帰したメンバーもいます。一度離れても、またふらっと戻ってこられる。家庭や職場とは違う、第3の居場所であり続けること。それが、この劇団を続ける原動力になっているのかもしれません。
古河の自己批判ショーでありたい。街への愛ともどかしさ

──いつでも帰れる場所であるというのは素敵です。一方で、活動の場として見たとき、拠点である古河に課題を感じることはありますか?
山本:正直なところ、今の古河には僕らが活動できる「ちょうどいい小屋」がないんです。かつて古河駅の近くにあり、よく利用していたライブハウス『スパイダー』も無くなってしまいましたから。
──市内には大きなホールや公共施設もありますが、それでは難しいのでしょうか?
山本:施設は立派なんですが、駅から遠くて車がないと行けなかったり、演劇には使いづらかったりするのが現状です。東京や遠方から来てくれるお客さんのことを考えると、どうしてもアクセスの良い小屋がある市外・県外へ出ていかざるを得ない。本当は、この古河でやりたいんですけどね……。

──このままでは古河市は自己批判ショーという貴重なカルチャーを手放してしまうのではないか、とさえ感じてしまいます。
山本:そう言ってもらえると嬉しいですね(笑)。僕らは『古河の自己批判ショー』でありたいし、いつかは『自己批判ショーがいる古河』と言われるようになりたい。だからこそ、街ぐるみで応援してもらえるような環境が少しでも整えばいいな、とは願っています。
中身は本気、価格は衝撃。30年の集大成「史上最大の自己批判ショー」

──古河への深い愛情があるからこその願いですね。そうした想いもすべて乗せて、いよいよ30周年の集大成となる記念公演が、水戸で開催されます。
山本:タイトルは映画のパロディで『グレイテスト・自己批判ショーマン』とふざけていますが、中身は本気です(笑)。今回は劇団の枠を超えて、『演劇事務所’99』の佐藤信郎さん、『プロフェッショナルファウル』のいなだかんたさん、そして『演劇修団たまてばこ』の新堀浩司さんなど、茨城演劇界のトップランナーたちがゲスト出演してくれます。まさに茨城の実力派が集結した、二度と見られないステージになります。
──それほど豪華なキャストが揃った記念公演で、チケット代が1,000円。破格すぎて心配になるレベルなのですが……(笑)。
山本:これは30年間支えてくれた皆さんへの恩返しであり、ご祝儀のようなものなんです。値段を高くして空席ができるくらいなら、1,000円にして一人でも多くの方に笑ってもらいたい。誰でも気軽に来て、会場の熱気を感じて持ち帰ってほしいですね。

──旧作から新作まで観られるとのことで、初めての方でも楽しめる内容になっていますよね。
山本:30年間の集大成としてベスト盤のような構成にしているので、予備知識ゼロでも絶対に楽しめます。さっきも言いましたが、僕らは『古河の自己批判ショー』ですが、いつかは『自己批判ショーがいる古河』と呼ばれるくらい、街を代表する存在になりたい。今回の水戸公演は、その未来への第一歩です。会場で僕たちの30年分の熱量を体感しにきてください。古河の、そして記事を読んでくれた皆さんのご来場、お待ちしています!
【公演インフォメーション】
自己批判ショー結成30周年記念公演
THE GREATEST ZICO HIHAN SHOW MAN
グレイテスト・自己批判ショーマン 史上最大の中ホール
日時:2026年1月31日(土)
・1回目:13:00開演(12:30開場)
・2回目:17:00開演(16:30開場)
会場
水戸市民会館中ホール(ユードムホール)
住所
〒310-0026
茨城県水戸市泉町1-7-1
料金
一般1,000円(中学生以下は無料)
出演
自己批判ショー、ゲスト(佐藤信郎、いなだかんた、新堀浩司ほか)
【チケットのご予約】
チケットの予約はこちら>>チケット公式リンク
【公式SNS・ホームページ】
・公式インスタグラム:@zicohihanshow
・公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/user/ZICOHIHANch
・自己批判ショー公式サイト:https://zico-hihan.sub.jp/
Text&Photo:相馬はじめ