ヒト / meet

仕事を辞めないという選択 〜 民間企業が導入!新たな取り組みとは?〜 「今じゃないけど、今でしょう」問題

koga.ライターのゆきらこです。 

 

古河市鴻巣に古河事業所を持つ、三桜工業株式会社さんにて

誰もが直面する可能性がある「働きながら介護すること」について新たな取り組みが始まったと聞き、取材をしてみました。

 

現在の日本は、70歳からそろそろ80歳に差し掛かる人口が最大値にくる時期に、もう突入しているのは言うまでもありません。

 

私の親は団塊の世代で、今年で70代後半を迎えます。

 

家族が”老いていくこと”は誰にでも直面する可能性がありますが、”今”はまだ気づいていないか、直面していないという人がほとんどかもしれませんね。

 

でも、いつしか、または突然に。

 

自分の身に降りかかるかもしれません。

 

家族に何か起こったら、”働く”ことを犠牲にせず

今までと変わらず働き続けることができるのでしょうか?

 

この問題にいち早く取り組んだ地域の企業が三桜工業さんです。

 

 

従業員が「働き続けられる」環境を守る

女性の視点から生まれた介護講座

 

先日、三桜工業古河事業所で従業員の方向けに「介護休業制度」の講習会が開催されました。

 

介護休業制度をどんな場面で、どのように利用すべきかを知ってもらうための取り組みで、希望する従業員がまんべんなく受講できるように、講習会は平日の勤務時間内に行われました。

 

講習会を企画したのは​​​​​​「三桜工業おもいやり活動」という部門横断のプロジェクトメンバーです。

全員女性で構成されていて、「働きながら介護すること」を自分の身に置き換えて考えた時、会社にとっても、重要な問題だということに気づき、会社に提言して今回の講習会が実現したそうです。

講習会を運営しているプロジェクトメンバーの皆さん。 (2023年9月撮影)

 

仕事をしていく上で、家族の介護の壁が立ちはだかることがあります。

介護に直面することは事故のように突然に、または認知症のようにジワジワ迫ってくるかもしれません。

 

そんな時、

仕事をしながらどう対応すればよいのか?

仕事を犠牲にせず、働き続けられるのだろうか?

 

プロジェクトメンバーは従業員がそんな悩みに直面したとき

”仕事を辞める”という選択肢を取らなくて済むように、会社として取り組む必要がある!と考え、従業員向けに講座を開催することにしたそうです。

 

三桜工業が試みる『企業』✕『社協』

〜古河市社会福祉協議会との連携〜 

 

社会福祉協議会=通称「社協」。

みなさんにとって、社協は馴染みのある存在でしょうか?

 

社協は、一言で言うと、“地域福祉”を目指しており、障害・高齢・経済的な問題など、住民がどんな状況に置かれても地域で安全で安心して暮らせるように、支援事業や相談窓口などのサービスを提供している団体です。

古河福祉の森会館正面

社会福祉協議会事務所入り口

 

社協では地域福祉を推進するため「ももちゃん寺子屋教室」という事業により、介護などに関する学習会を開催しています。

 

通常は社協の職員の方が講師となり学習会を行うそうですが、プロジェクトメンバーは一念発起!

自らが講師となり講習会を開催することにしました。

 

「企業」×「社協」の連携の始まりです。

 

まず、プロジェクトメンバーは自分たちが介護の制度を知ることから始め、相談が繰り返されたそうです。

 

実際に行われた講習会に私もkoga.ライターとして参加しました。

 

講習会では、介護休業制度と会社の関係性について、以下のことが従業員の方に向けて説明されました。

講習会の様子

 

🟠介護休業

対象家族1人につき、3回まで通算93日間の休みを取ることができる。(土日含む)

介護休業について賃金の67%相当の給付金が受けられる。

休業を申請して休むと会社の方で手続きをしてくれる。

 

🟠介護時短

9:00〜16:00 3年間の中で2回まで・・・正社員のみ

 

🟠介護休暇(日単位・時間単位)

1人の要介護者に対して1年間で5日間、2名以上最大10日間

 

このようなことは、介護をしなければならない時が来た際に知っているのと知らないのとでは、

「働き続ける」ことに対しても、身構え方に大きな差ができるでしょう。 

 

講習会には、様々な年齢層の従業員が、各持ち場のセクションを超えて一堂に集まっていました。

講習会で説明を行う社員の染谷さん

 

お話を伺うと、講師役を務めた彼女自身も介護経験者とのこと。

 

自身の経験を踏まえたお話は、外部の専門の方かと思ってしまうほど頼もしい内容で、社員自ら従業員にレクチャーするという構図が出来上がっていました。

 

講習会の後半には、グループを作り、振り返りの話し合いの時間が作られていました。

 

会場内を歩き回ってみると、実際に介護を経験した人が、他の人にその話をしていたり、普段はお互いに話す機会がないであろう社員同士で、活発な話し合いがなされていたのがとても印象的でした。

 

 

 

私たちは介護についてどう向き合う?

 

昨今、子育てに関しては会社を休む育休という形で、世間的にも理解がされやすくなってきました。

 

だが、介護問題はどうでしょう?

 

冒頭でも書いたように、介護が必要になる場面は誰にでも訪れる可能性があります。

いつかその状況が起きる可能性があっても、話題にあがることが少ないように思います。

子育てはもちろん大変ですが、喜びもあるし、なにより赤ちゃんは成長する。

先に進めば進むほど楽になっていくことが多いと思います。

 

逆に介護の現場では先が見えない。

そして、人生の終焉に向かう容赦ない現実もあります。

 

もし今、家族が要介護者になったとしたら、日本においては女性が介護を担うことがまだまだ多いという現実がついて回ります。

 

自分が仕事をしていて、勤め先の介護休業制度のことを知っていれば

仕事を継続することの漠然とした不安感が消えるのではないか?と感じました。

三桜工業株式会社 古河工場

 

まとめ

 

「働きながら介護すること」は

企業側にとっても大事な人材の損失を免れることになります。

 

そこで働く従業員にとっても、

介護のために仕事をやめないで収入を維持することができます。

 

今回、三桜工業と社協の連携について社協の方が

 

今まで社協では企業と共同で介護制度の啓発について推進する事例はなく

今回のような 企業と社協が一体となったこの取り組みが

先駆事業となって他の会社へも広がって欲しい。

 

と話していました。

 

「働きながら介護すること」について目を向けるなら、一番に押さえたい現実的なポイントと感じました。

 

企業と地域が一体となって”介護”という日常生活の重要な基盤を作っていくこと。

 

それはつまり、古河市民一人ひとりが安心して暮らしていけること。

強いては、地域全体の生活を守ることに繋がっていく、そう思えた取材でした。

 

今後も垣根を超えた企業の取り組みが市内の企業全体に広がっていくことを切に願っています。

 

ライター:ゆきらこ

 

 取材先

三桜工業株式会社ホームページ

https://www.sanoh.com/ja/

 

ももちゃん寺子屋教室についての

お問い合わせはこちら

古河市社会福祉協議会地域福祉課

TEL 0280-48-0808

社会福祉協議会ホームページ

http://www.koga-syakyo.com

  • 記事を書いたkoga.ライター
  • koga.ライターの新着記事
ゆきらこ

ゆきらこ

こがキラ photo クラブ 3 期生

こがキラ photo クラブ 3 期生。生まれは北陸。丸い餅が主流の文化圏から四角い餅が主流の古河に嫁いで 20 年。3 人の子育てを経ながら 3 代続く左官屋嫁として邁進中。深い歴史の記憶が横たわる古河の暮らしや、そこに暮らす魅力的な人々をウォッチングしていきたいと思います。

  1. ~障がいがある人もない人も共に生きることを目指す~ 就労支援 ✕ ライブレストラン「AJISAI HOUSE」

  2. カットもパーマもしません。髪を染める専門のお店  ”mu-t organiccolor & treatment salon”

  3. お客様の笑顔がモチベーション! 手話対応もOK!地域に親しまれる洋服のお直しコンシェルジュ【Ange】さん

PAGE TOP