ヒト / meet

〜みんなが知ることで救われる〜 子どもの食物アレルギー家族の会【アレっ子ねっと】

 

こんにちは。koga.ライターのゆきらこです。
今回は”食”について。
食物アレルギーを持つ子どもを育てる家族、特にお母さんたちの悩みは、私たちが思った以上に大変で、それでいて周囲に埋もれがちです。
食物アレルギーに対しての理解はまだ社会に十分に広まっていない中、子どもと家族、特にお母さんたちは、孤立感や不安を抱えている実態があります。

この記事では、そうした親子が感じる生きづらさや課題についてお伝えしたいと思います。

 

古河市で立ち上がった「アレっ子ねっと」

アレっ子ねっと代表の清水さん

食物アレルギーに関する情報を共有する代表の清水さん

 

アレっ子ねっと代表の清水さんは、中学生と小学生のお子さんのお母さんです。
中学生のお子さんに食物アレルギーがあると判明した当初、手探り状態でどうしてよいかわからなかったといいます。
食物アレルギーと一言でいうのは簡単ですが、医療機関で食物アレルギーだと診断されたその場から即、その子にとって、アレルゲンとなる食べ物を口にすることのないように親は細心の注意を払うことになります。
清水さんのお子さんの場合、アレルゲンとなる食べ物は【卵、大豆、そば、エビ、カニ、落花生、ごま】でした。
清水さん自身、食物アレルギーを経験したことがありませんでした。長男の発症により、まずは食物アレルギーについて知ること、情報を集めること、理解することから模索が始まりました。

まず情報が知りたい、当事者の親同士でつらさや不安を話し合いたい、アレルギーっ子のママたちはどんな子育てをしているのか共有したい。
”アレっ子ねっと”はそんな1人のお母さんの手探りによって2019年12月に立ち上がりました。
清水さんは、その延長で、自分のような同じ境遇のお母さんたちが他にもたくさんいる、見えていないだけで、社会に埋もれてしまっている現状を知ることになります。

 

アレっ子ねっとの集会

アレっ子ねっとのおしゃべり会の様子

 

会では、胸の内にたまった声を仲間に聞いてもらうことで、思いがけないアドバイスをもらえたり、解決策をみんなで考えたり・・・。
随時更新される国の政策や、アレルギーに関する情報をお母さんたちで共有しています。
この日初めて参加したママもいて、この場があって救われた、という声を聞くことができました。

 

食物アレルギー表示の現状は?

食物アレルギーの表示は、国の食品表示基準で規定されています。
アレルギーっ子は食物アレルギー表示を確認することで、自分のアレルゲンを含むのかどうかを判断し、食品を選ぶことができます。

重篤度・症例数の多い8品目【特定原材料:えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピー ナッツ)】については、食品表示基準で表示を義務付けし、過去に一定の頻度で健康危害が見られた 20 品目(特定原材料に準ずるもの)については表示を推奨しています。

この20品目については必ず表示をする義務がないものであるため、保護者が一つ一つをチェックすることも欠かせません。

また、外食ではそもそも食物アレルギー表示の義務がないため、注文の前に、お店の方に直接尋ねることも時には必要で、お店に遠慮する気持ちと、命に関わるアレルゲンから子どもを守るリスクを抱える気持ちとで、苦労することもあるそうです。

 

命のお守り“エピペン”とは?

エピペン

重度のアレルギーを持つ人が常に持ち歩いているエピペン

みなさんは、エピペンを知っていますか?

エピペンとは、呼吸困難など短時間に全身にあらわれる激しい急性のアレルギー反応(アナフィラキシー症状)が起きた時に使用する応急処置の薬(自己注射製剤)です。

使い方は本体にシールで貼ってあり誰でもわかりやすいように図説されています。

2012年12月、東京都調布市立小学校で乳製品アレルギーのある11歳の女児にチーズ入りのチヂミが提供され、アナフィラキシーショックを起こして亡くなりました。

この時に女児が所有していたエピペンは、周囲の誰かによって使われることなく、女の子はそのまま命を落としてしまいました。

 

私もこの取材で見せてもらうまでは、エピペンというものの実物を見たことがありませんでした。

このエピペンは、アレルギーっ子にとっては命のお守りとも言えるもので、重度のアレルギーを持っている人は、常に身につけて持ち歩いているものです。

症状が出た時に、自分で打てる場合は良いのですが、時には症状が急激に進んだような場合には意識が遠のくこともあります。

本人が自力で打てないような状態の時には、周囲の人の助けが必要不可欠です。病院外での緊急時においては、その場に居合わせた「一般の人」、つまり誰でもエピペンを打ってあげることができます。

 

エピペン®︎サイト
https://www.epipen.jp

時にはその行為で生死が分かれてしまうこともあると知り、私も自分がそのような場面に遭遇した時には、まず命を助ける、ということを念頭に置いて、その人の持ち物の中からエピペンを探し出し、躊躇せずに打つ行動をしたいと思いました。

 

細かい配慮と心配が欠かせない中で日常を生きる親子

お母さんたちの話では、アレルギーっ子は、日常の社会生活で以下のような“困りごと”に直面することがあるそうです。

スーパーでの買い物 すべての成分表示をチェックし、誤ってアレルゲンの含まれる食品を買わないように神経を使う。まだ小さい子どもたちは、自分のアレルギーを理解できていないので、外出先でも家庭でも、常に親はその子が口にしないように目が離せない。
学校給食 アレルゲンが含まれていないか、常に献立表の隅々までチェックし、学校とのやりとりが必要。過去には学校給食でおかわりのチヂミにアレルゲンの成分が入っていたことにより、それを口にした女児がエピペンを使用せずに亡くなった事例もありました。不慮の事態も想定し、常に心配がつきまとう。
保育園や幼稚園の給食 隣の子の食べものに触ってしまったり、床にこぼれたものに触れたりするだけでも、アレルギー症状がでてしまう場合もあり、みんなと同じテーブルで食べることができないケースも。「友達と同じものが食べられない」子どもが孤独を感じることもあり、お母さんにとっては「みんなと同じように給食をたのしませてあげたい」と、親にとっても園側にとっても子どもの気持ちに寄り添いながら安全を守る難しさがある。
宿泊学習や、修学旅行 利用する宿泊施設でのアレルギーっ子の食事等についての事前打ち合わせは、旅行会社や学校を通して行っている。しかし、現状はその子に適した細かな対応ができない場合も多く、全ての手配をアレルギーっ子の親が対応することも少なくない。

 

精神的な負担
「万が一のことがあったら…」という不安は、食物アレルギーを持つ親子にとって常につきまとうものです。

・お母さんは24時間気を抜けない状態が続き、心身の疲れを感じることが少なくありません。
・子ども自身も「自分は人と違う」と感じ、ストレスや劣等感を抱えることがあります。

このような状況は、親子双方にとってつらいものです。特に親は「自分が頑張らなければ」と責任を感じ、心の負担が大きくなります。

 

curry.キッサコさんで毎週オープンの「hiyoriya.cafe」

curry.キッサコ外観

アレっ子ねっとの集まりの場はcarry.キッサコさん

古河市北町にある「curry.キッサコ」。ここで定期的にアレっ子ねっとのメンバーが集まります。
この日、おしゃべり会が開催されたのは、「curry.キッサコ」でデザート・焼き菓子を担当しているhiyoriya.さんがOPENしている『hiyoriya.cafe』の日。
運営しているhiyoriya.さんが店内でアレルゲン不使用のおやつを提供しています。

 

hiyoriyaさんのチラシ

hiyoriya.さんのチラシ

そのhiyoriya.さんのお子さんもアレルギーっ子。彼女の経験から、お店では、時々親子で参加できるアレルギー対応のおやつ作りの料理教室も開催されていて、とても人気だそうです。

もちろん、アレルギーを持ってない親子での参加も歓迎です。

アレっ子のメンバーの声として、いつも家では我慢させてしまっているので、このようになんの心配もなくお菓子作りができて嬉しい、お家でも作ってあげられる、など、感謝の声も聞かれました。
私が取材した時にもアレルギーに配慮したおやつを提供していましたが、米粉のケーキや、乳製品なしのプリンなど、普通のおやつよりもこちらの方がいいんじゃないかしら、と思えるほど優しい味でおいしかったです。

 

hiyoriyaさんのおやつ

hiyoriya.さんの提供する3大アレルゲン不使用のおやつプレート

この日は、豆乳プリン、抹茶サブレ、米粉のドーナツ(ココアバナナ)でした。

 

社会全体の理解とサポートが必要

食物アレルギーを持つ子どもとお母さんが安心して生活するためには、社会の理解が欠かせません。

今後、学校や保育園、関わる人たちみんなの正しいアレルギー知識と理解が進み、親子と共有すると同時に、その子だけが他の子と全く別の行動になってしまうことがなく、学校の宿泊行事なども安全に楽しめるように、できる限り当人の立場になった対応とルールの整備、連携が必要です。
こどもにとっての、みんなと一緒に楽しむ時間を失うことがないように、可能な限り、ここは大切にして欲しいと思いました。

 

まとめ

アレっ子ねっとのチラシ

アレっ子ねっとは、現在、当初の清水さんと同じように、悩みを抱えるお母さんたちが支え合う場になっています。繋がりの輪は広がり、最初は12人だった会員が、現在は26人に増加。
古河市内だけで11人、小学生や幼稚園児だった子どもたちが成長し、現在は中学生になる子もいます。
会では、随時更新される国の政策や、アレルギーに関する情報をお母さんたちで共有しています。

食物アレルギーは目に見えにくいものだからこそ、少しの理解と配慮が大きな支えになります。アレルギーを持つ子どもとお母さんが、安心して笑顔で過ごせる社会の実現に、私たち一人ひとりができることを考えていくこと、また地域で大きな支援の輪を作っていくことが大切だと感じました。

まずは、みんなが知ることから、ではないでしょうか。

 

(ライター:ゆきらこ)

【アレっ子ねっと】
毎月1回(月曜日)、curry.キッサコさんにて開催

〈今後の活動予定〉

4/14(月)古河市、4/25(金)は羽生市でも「おしゃべり会」を開催

4/6(日)円満寺イベント「花まつり」に出店
詳細についてはインスタグラム @allekko_net
◉問い合わせ先
アレっ子ねっと代表 清水
TEL/080-2010-8214
mail/allekko.net@gmail.com

  • 記事を書いたkoga.ライター
  • koga.ライターの新着記事
ゆきらこ

ゆきらこ

こがキラ photo クラブ 3 期生

こがキラ photo クラブ 3 期生。生まれは北陸。丸い餅が主流の文化圏から四角い餅が主流の古河に嫁いで 20 年。3 人の子育てを経ながら 3 代続く左官屋嫁として邁進中。深い歴史の記憶が横たわる古河の暮らしや、そこに暮らす魅力的な人々をウォッチングしていきたいと思います。

  1. 〜みんなが知ることで救われる〜 子どもの食物アレルギー家族の会【アレっ子ねっと】

  2. ~障がいがある人もない人も共に生きることを目指す~ 就労支援 ✕ ライブレストラン「AJISAI HOUSE」

  3. カットもパーマもしません。髪を染める専門のお店  ”mu-t organiccolor & treatment salon”

PAGE TOP